課題:機能では無く、女性の感性に訴えるマンションを
世の中の大半は女性が良いと思うものが売れるマーケット構造をしています。
それは賃貸マンションも例外ではありません。
女性に受け入れられるマンションは、男性にとってもいいものとなります。
オーナーはそのことに気づき、女性スタッフだけの弊社に設計依頼をされました。
世の中の大手デベロッパーが「女性」を売りにしていても実際にはIHキッチンとバス乾燥機と、収納が多いなどハード面の工夫ばかり。
しかし、本当に女性が必要と感じているのは、そういった機能だけではないはずです。
私たちはオーナーと一緒に「本当に女性に喜ばれるマンション」をつくることをミッションに、土地選びからプロジェクトをスタートしました。
コンセプト:女性が元気になるマンション
マーケティング的にも、女性から支持されれば安定収入が可能になることが見えていました。
世田谷区千歳船橋というイメージも良く、土地も駅から徒歩7分の好立地でしたので、人気が出ることは間違いないと思われました。
しかし、この段階で、すぐ設計することはしませんでした。
女性が賃貸において本当に必要とする要素や大切にするポイント、それが何かを知る事から始めていったのです。
そのために開催したのが、女性20人(一般女性)を集めて座談会。
ヒヤリングでは、間取り・設備・収納などあらゆる方向に及びましたが、その中で一番男性との違いは五感を大切にすることだとわかりました。
そうして、固まったコンセプトが「女性が元気になるマンション」でした。
具体策:手つかずの共用部分にアイデアを
女性が元気になるために必要なのは、“五感がここちよいこと”。
そのために大切なのは共用部分の作り方です。
道路から見た時に、これはプチホテル?レストラン?などと、一見して賃貸マンションだとわからないことは重要でした。
自転車置き場もあえて見せず、そこに部屋があるかのように隠すようにしました。
入り口はトンネルのように、一度閉じ、オートロックで入ると、そこに10mの吹き抜け空間が現れます。
水音・光・そよぐ風・オリーブやミカンという植物の香りが出迎えます。
女性の五感にうったえかける場所。
吹き抜け空間は階段室も兼ねていて、階段の面格子は太陽の光で、美しい影を落とします。
また、入居者が自由にハーブを植えることができる屋上庭園には、椅子とテーブルがあり、ゆったりとながれる時の中で、気持ちよくリラックスすることができます。
10室ある部屋の7割がワンルームで3割がメゾネット。
塗り壁をモチーフにキッチン・パウダー・浴室・居室。
すべてに女性が元気になる要素を込めました。
結果:オープンしてから2年間、ひとりの退去者もなし
通常入れ替わりの多い春の季節にも誰ひとり退居者が出ないは、ほとんど奇跡に近いです。
世田谷区から小田原に異動になった入居者の女性医師は、通勤のために車を買いました。
このマンションから小田原に通う方法を考えたのです。
また、あるワンルームに暮らす女性は結婚相手が出来ました。
その彼とあいかわらず同じ10坪のワンルームで暮らしています。
屋上庭園では毎週土曜日、入居者が自然と集まりワインを持ち寄って楽しい宴を催しています。
強制は全くない、義務もない、自由なコミュニケーションがそこに成立しています。
それは、オーナー自身がそこに暮らし、月曜の朝にロビーでコーヒーサービスをしたり、近所のかわいいお店があればその情報を掲示板にあげたり、
ネコだけは飼ってよかったり(女性の癒しのため)・・。
あらゆるところに配慮があるマンション。
通常、賃貸に暮らすと、お隣が誰かもわからないものですが、このマンションはまるで全員が家族のよう。
ほどよい距離感でうまくつながっている大人の家族。
だから、自然と似たような価値観の人が集まってくる。
空間デザインが人と人をつないでいるのは間違いないと思います。
施工年 | 2011年 |
種別 | 賃貸マンション |
業務内容 | 設計デザイン |
所在地 | 東京都世田谷区 |